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花追い人の撮影日記


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花追い人の撮影日記(霜月から師走)

富士に紅葉(河口湖北畔) 休日毎に花を求めてあちこちに出没している。11月から12月は、なんといっても一年中で最も花の少ない時期である。それでも、足を使い、頭を使いなんとか撮影を続行している。今回はせっかくの原稿依頼だから紙幅の許す限り花に限らず、自然を題材にした撮影日
記を公開することにする。撮影場所は東京を中心とし、写真雑誌などに紹介されない、とっておきのノウハウをいっぱい詰めたつもりだ。

例年11月2〜3日頃には、紅葉を求めて、富士五湖方面などに紅葉を撮りに出かける。河口湖の北畔は旅館もなく閑散としている。カエデ並木の周辺は紅葉を前景に湖越しに富士山を望める。夜間の冷え込みがあるのだろう。カエデだけではなくコナラツタの紅葉も素晴らしい。本栖湖では岡田紅葉の五千円札の撮影地である浩庵前展望台はあまりにも有名だが、ここから身延町方面へトンネルを抜けたあたりをお奨めしたい。霧がかかった山並みと見事な紅葉が印象的だ。ただしトンネルを抜けると富士山は見えないのが残念。西湖周辺ではその名の通りの紅葉台。樹木の種類が多く色抜けが抜群だ。逆光線に輝くススキの穂を前景に富士山を望むこともできる。朝霧高原のグリーンパークの裏側あたりに誰も知らない秘密の場所があるが、詳しい場所を書こうとしたところで、本稿は東京中心であったことを思い出した。

落ち葉(神代植物公園) 東京周辺の紅葉のお奨めは、光が丘のイチョウ、平林寺のカエデ類。ところでカエデ類は種類が多く、秋川渓谷撮影旅行でおおいに話題となったメグスリノキもカエデの仲間だ。最もふつうに見掛ける葉の切込みの深いのは、イロハニホヘトの7つに裂けるところからイロハモミジという。この別名がタカオモミジ。高尾山のモミジはこのタカオモミジが中心だ。ただし、タカオモミジの高尾は京都の紅葉の名所の地名であって、東京の高尾山のことではない。
 紅葉の撮影のしかたは、山全体をとらえるもの、数枚の葉をクローズアップするもの、地面に落ちた葉を水の流れや木の根張りなどと絡めてとらえるものなどがある。一年中で最も太陽の位置が低く光の弱さを生かして、やわらかい光と樹木の長い影が地面に落ちた林の中に敷き詰められた落葉を絡めて、秋から冬の寒々とした風情を表現するのはいかがだろうか。このような写真は秋が瀬公園でも十分に撮影可能だ。日中でも低い位置からの斜光線を撮影に利用できるのが12月下旬の冬至(今年は22日)の前後だ。

 11月上旬の立冬(今年は8日)のころに各地で開催されるのは菊花展。東京では、明治神宮、小石川後楽園、神代植物公園などで見られる。是非一度撮影に出かけられたらいかがだろうか。大菊には、厚葦と筋雲(葛西臨海公園)
物、厚走り、管物、一文字菊などの種類があり、菊花の並べ方は、横にこれらの種類ごと、斜めに同じ花色を整列させるのが正式だ。こんなことも知っていると撮影に生かせるかも知れない。
同じ菊類でも、自生種ではヨメナハマギクイソギクツワブキなんかがこの時期に見頃を迎える。ハマギク、イソギクはその名の通り海岸に咲く花だが、葛西臨海公園の海岸に見事な群落を作るので一見の価値がある。この頃は青く抜けた空に羊雲や鯖雲などの素晴らしい雲が現れることが多いので、ローアングルからイソギクを空抜きで撮影するのもよい。ところでバックに素晴らしい空を写し込んだ写真は、被写体を見つけてから背景を探していてはまず撮影できない。面白い雲を見つけたら枯ススキでもなんでもこれを背景に出来るような被写体を探すことだ。

 サザンカが本格的に咲くのは11月。ツバキとの違いは、ツバキが花全体がぼとりと落ちるのに対して花弁がばらばらに落ちること、多数の雄しべが合着しないこととか言われる。植物学的な厳密さはともかく、サザンカは冬の花、ツバキは春の花である。咲いている状態ではよく似た花だが、地面に散った花を撮影する場合は落椿は花ごと散らばっているのに対して、山茶花は花弁がバラバラに散って花色の絨毯になる。ところでカンツバキというのは、サザンカとツバキの交雑種であるとか、サザンカの一品種であるとか諸説があるが、ツバキの名はあるがサザンカに近いので紛らわしい。
ケヤキ(神代植物公園)
 もうひとつ。照葉樹の代表のツバキやサザンカはよく光を反射する葉が特徴である。花を撮影する時はPLフィルターで葉の反射をコントロールすることは各種の写真雑誌で紹介されているが、絶対に写真誌に書かれていないのはツバキ、サザンカの葉をバックに他の被写体を撮影すると、葉の照り返しがきれいな玉ぼけになることだ。撮影時に絞りをいろいろ替えてみると、玉ぼけの大きさが変化する。これは原理的には絞りによる被写界深度のコントロールと同じことなのだが、絞りによって玉ぼけの大きさが変わることは意外と写真誌に書かれていない。

 冬の花といえば、温室内の撮影の機会も多いが、一つだけとっておきのテクニックを紹介しておく。温室に入ったらまず、喫茶店か自動販売機のあるコーナーでゆっくりとコーヒーでも飲むことだ。冬の外気との温度差でカメラの結露を解決する方法はこれしかない。夢の島熱帯植物館にはトロピカルな喫茶室があるから是非利用されるとよい。

 この時期のその他の花は次の様なものだ。ツバキやサザンカの仲間で緑茶や烏龍茶の原料となるチャ。梅の名を冠しているが梅とは全く類縁関係のないロウバイ、花の中心部の茶色の部分がなく全部黄色に見えるのがソシンロウバイだ。伊豆まで出かけなヒヨドリ(石神井公園)くても新宿御苑で十分撮影可能なスイセンリンドウトリカブトなどの野草類を見つけられるととても幸せだ。これらの詳しい話題は紙幅の関係で割愛させていただく。それより、木の実では、ノイバラガマズミムラサキシキブ。草の実ではジャノヒゲヤブランウラシマソウなんかが面白い。ハスの枯れた葉や蜂の巣のような実、フヨウウバユリの実、アシニラアジサイなんかの枯れた花もなかなか秋の風情を感じさせる。暦の上の霜降は10月24日だが、東京の初霜は11月下旬に降りることが多く、花のない花写真を目指してみるのもおつな物。

 ところで、冬は野鳥のシーズンだ。公園の芝生には立ち止まるときにしっかり胸を張るツグミ、木の上には森の哲学者と言われるモズ、石神井公園のカモ類、光が丘公園の四阿屋のまわりではルリビタキやアオゲラ、八津干潟まで足をのばせばシギ・チドリ類やカモメ類。

ああ、もうたまらない。こんな原稿どころではない。お先に撮影地にいっています。

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