秋分の日、彼岸花咲く
9月第4週(9月24日〜9月30日)
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秋分の日(今年は9月23日)。二十四節気のひとつであり、秋の彼岸の中日にあたる。
「暑さ寒さも彼岸まで」というように、残暑もようやく衰え、さわやかな冷気がいちだんと強まる。
富士山の頂が白い雪におおわれ始めるのもこの頃からである。
花の撮影をしている人なら一度は巾着田(埼玉県日高市)のヒガンバナの撮影を試みる。
これまでも毎年おびただしい数の人たちがおびただしい数の撮影をし、もう誰が撮っても新しい写真は出来ないとまで言われた。
それでも、この時期になるとどうしても出掛けてしまうというのが巾着田である。
結局95年以来毎年で6年目。
微妙に異なる開花時期に苦労はしても、やはりそれだけの魅力はあるところだ。
さすがに "梅の木の下にたくさん群生しています" という写真ばかり撮るわけにはいかないけれど、その年毎の気候による花の時期と量、当日の天気による微妙な変化。
こういう条件の違いがあり同じ写真は撮れない。
早朝の雨から上向きの天気、午前中に完全な秋空が広がるという理想的な条件。
こんなときは撮影に力が入る。
巾着田は高麗川という地名に現れているように朝鮮半島の人たちが住み着いた場所と言われる。
日本では彼岸の頃に咲くが、少し気温の低い釜山あたりでは、八月の中ごろから咲きはじめて秋の到来をしらせる花だ。
千二百年前の高句麗の人々は、彼岸花を植えて、故郷Eを偲んだのかもしれない。
別名『火事花』という炎のような花に肉親との愛別離苦を呪ったのかもしれない。
彼岸花はもともと大陸から渡来した植物だ。
根に毒を持っているが、皮肉なことに救荒植物として日本に普及した。飢饉があると農民は食べるものがなくなる。
こんなときに水でさらして毒を抜いて飢えを凌いだのが救荒植物だ。
有毒だから万一にも年貢に搾られることはない。
野草ではなく農家の周りに人為的に植えられた植物である。
田圃の畦に咲くのが本来の姿だ。
この姿をとどめているところは少なくなったが、足で探した撮影地を一つだけ紹介しよう。
神奈川県南足柄市といえば小田原から箱根登山鉄道大雄山線の沿線である。
足で見つけた撮影地だけあって(もちろん観光地ではない)ここをわざわざ訪ねてくる人はいない。
三脚を立てたカメラマンはもちろん、コンパクトカメラを持った人すら見たことがない。
見かけるのは農作業中の人とたまたま通りかかった地元の人ばかり。
これだけの見事な撮影地を全く独り占めにすることが出来る。
ここまでくれば、このまま箱根あたりに回るのも目と鼻の先だ。
いわゆる仙石原、台が岳のススキは銀色の穂を秋風にたなびかせる。
箱根湿生花園では涼しげな色のフシグロセンノウが咲いた。
猛毒で有名だがそれには不釣合いに繊細な花をさかせるトリカブト。
花弁の細かい模様を是非虫眼鏡で見ていただきたいのはアケボノソウ。
ピンクの小さな金平塘はミゾソバの花、こちらも虫眼鏡が必要だろう。
湿原に鮮やかな黄色で遠目を引くのがオミナエシ。
真っ白な試験管ブラシのようなサラシナショウマ。そして、草原の人気ナンバーワンはワレモコウ。
とにかくどこもかしこも秋真っ盛りである。