花追い人の撮影日記
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花追い人の撮影日記(葉月)
ツクツクボウシ、それに続けて、ミンミンゼミが鳴き姶めると、水銀柱は一気に上昇して本格的な盛夏が到来する。しかし、セミ達に続いて秋の虫が鳴き始めるころになると、夕方にはほっとするような涼しさを感じる日が混じったりもする。もっとも近頃の虫の声は、地面ではなくて木の上から聞こえて来るほうが多くなった。近年爆発的な増え方をしている帰化昆虫のアオマツムシだ。立秋(8/07)、この日を境に「暑中見舞」が「残暑見舞」に替わるが、まだまだ厳しい暑さが続く。
真夏の花といえぱ、「ヒマワリ」。向日葵と書くように本当に太陽の方を向くのなら、東から西へ太陽を追いかけて、西を向いたまま夜を迎える。朝、東から太陽が昇ったときのヒマワリのあわてる姿を一度見てみたい。それとも、夜の間に少しづつ東へ戻っているのだろうか。実際は蓄のあいだには多少太陽を追って回るけれど、花が開くと東を向いたままとなる。撮影は大変だ。花の撮影のセオリ−通り逆光線で写そうと思うと必ず花は後ろ向きだ。2〜3本ならともかく一面のヒマワリとなると撮影場所も限られる。北海道も有名だが、お奨めは山梨県明野村。中央高遠須玉ICからすぐのところだ。八ケ岳、南アルプス、富士山が遠望できる日照時間日本一の明野村では3箇所4ヘクタ−ルに30万本のヒマワリが植えられている。1箇所ずつ微妙に花期をずらせているため、どこかで満開を見ることが出来る(写真1)(写真2)。
「ハス」。開花の時に音がするかどうかは知らないが、早朝の花だから植物園のような開園時間が決まっているところは駄目である。水元公園の小合溜、緑の相談所の裏あたりに一面の群落がある。水元公園の隣にある東京都水産試験場(水産試験場はその後他の場所に移転したが現在もオニバス、ハスは見られる。この水産試験場跡地は今後水元公園に組み込まれることになっている。)にも素晴らしいハスの群落がある。ここは本来、土日には一般の見学は受け付けていないが、中で職員にあったら挨拶してくれるくらいおおらか。他のカメラマンは絶対にいないからゆったりと撮影ができる(写真3)。
そして、なんといっても上野の不忍池。午前中の光線が逆光線になるのは上野動物園の園内になる。外で撮影をしながら9時半を待って動物園に入園する。但し、ほとんど動物を見ないのに5OO円の入園料に釈然としないものがある。ハスといえぱ古代のインドで多産や生命誕生の象徴とされていたことから仏教の極楽浄土の思想と強く結ぴっく。今ではやや抹香臭いイメージがあり、カレンダーやポストカ―ドには使いにくい花となったのは残念だ。
「木槿(ムクゲ)」、「芙蓉(フヨウ)」も盛夏の花だ。どちらもアオイ科ハイビスカスの仲間で長く曲がって先が5つに割れたメシベとメシベの途中から生えているように見える多数の雄しベ(本当は雄しベがメシペに合着している)が特徴だ。咲き始めは木槿が少し早いけれど、ほぼ同じ時期に見られ、また、どちらも多数の品穂があることから花だけを見て区別するのは大変に難しい。なあに、葉を見れぱ一目瞭然。10〜2Oセンチの大きな、いかにも芙蓉の葉の形をしているのと、5センチ前後の小さな普通っぼいやつだ。この仲間は他にアメリカフョウ、モミジアオイ、トロロアオイ、オクラ、いづれも暑いころに美しい花を咲かせる。区別は特に難しいことはない。木槿は光が丘公園。芙蓉は皇居東御苑をお奨めする。それから、芙蓉は花が終わった後の実の形が面白いので絶好の被写体になる。これはもちろん秋の撮影だ。光が丘公園でタ方木槿の花を切って持ち婦ろうとしていた人がいたが、やめた方がよい。この花は一日花で、朝咲いて夕方散る。翌日は見る影もないであろう。だから花屋で売られることはまず無い花だ(写真4)。
「カラスウリ」の花を見たことがありますか。白いレ−ス編みの様な不思議な美しさのある花だ。特にお奨めの場所は無く、割合にどこでも見られる花だ。但し、私は一度も撮影したことが無い。この花は、朝や昼間には見ることが出来ない。夕方でもまだ駄目。夜9時近くになってようやく開花する。だから、私の撮影時の行動パタ−ンとはあまりにもかけ離れていてどうしても撮影する事が出来なかったのである。そう珍しい花でもないので今度是非撮影してみたいと思っているところだ。
8月も後半になると秋の気配が濃厚になる。こんな時、ススキの生えているところを見っけたらその根元を少しかき分けて見て下さい。「ナンバンギセル」の不思議な花を見つけられることがあります。赤塚植物園、向島百花園では確実。南蛮渡来の煙管(キセル)、今の言い方ではマドロスパイプというところだろうか。高さ15センチくらい、ススキに寄生して自分で光合成をすることもなく、もっぱら生殖活動だけをしている植物。だから、葉もなく葉緑素もない花だけの不思議な植物。しみじみと自然界の多様性を感じることができます(写真5)。
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