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花追い人の撮影日記


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花追い人の撮影日記(長月

真夏の思い出(赤塚植物園) 本稿は、執筆している時点で一ヶ月半から二ケ月くらい季節を先行させている。実は、これって結構辛いのだ。といっても、現在と違う季節感に自分が入って行くことが辛いと言うのではない。そうではなくて、この原稿を書いてからしぱらくの間、自分の季節感と現実の季節とのギャップに悩まされることになるからだ。まだ咲いている筈のない花をつい見に行ったりすることがある。

 今、本稿を読まれている方々は、真夏の暑いさなか、じっとしていても汗の滴るような時期にお読みになっていることは百も承知なのだが、今月号のテ−マは九月。次の様な季節感で書き始めさせていただくことになる。ほんの一時でも、秋の気分にひたって、この暑さを忘れていただくことにしよう。−

波紋(水元公園) うだるような炎天が一段落した。やかましい程だった蝉の声がいつの間にか気にならなくなった。木陰を歩くとカエデの葉の裏に蝉の抜け殻がたくさん目に付くようになる(写真1)。信号待ちでは交差点から遠くてもわざわざ物陰で待ったりしたのが、いつの間にか普通の位置にとまっていることに気がつく。子どもたちは夏休みを終え、学校で久しぷりに顔を合わせる同級生たちとお互いに日焼けの自慢をしあう。もっとも最近は予備校の夏期講習の情報交換なのかも知れない。有名な「稲村ジェ−ン」の名台詞は、「暑かったけど短かったね、夏」。 神代植物公園の緑の相談所の入ロに今咲いている花の名前が書かれた掲示板がある。どういう基準で数えたのか、ここに「今65種の花が咲いています」という意欲的な掲示が出された。この花の少ない時期に65種なんて嘘だろうと思ってはいけない。私は、咲いている花のうち名前の分かるものを手帳に書き留めてゆく。たちまち、75から80種類が手帳に記述された。私の勝ちだ。ヒガンバナ(日高市巾着田)とはいっても八月末から九月前半が花の少ない時期であることは間違いない。先ほどのカウントはたった一輪しかないものも、散りかけた花も、すベて含めた数である。被写体となるような花はほんとうに数えるほどしか見ることが出来ない。

 秋の青空を反映して多彩な雲の出現は、風景写真でも、花写真でも、ひと昧違った撮影の昧付けになる。 "鰯雲" は低気圧が近づく時に出現して鰯の大漁をもたらす。小さな雲の塊がまるで魚の鱗を思わせるのは "鱗雲"。雨の兆しといわれる "斑雲"。秋鯖の漁期に現れるという説もあるが、鯖の背中の模様に似た "鯖雲"。羊が牧場で群れているような "羊雲"。こういう素晴らしい雲を見つけたときには、もたもたしているとたちまち消えてしまうから、急いで前景となる被写体を探す。−本のセイタカアワダチソウススキなら十分、何の変哲もない木立でもOK。背景が良けれぱ一本の街路灯でさえいい風景写真になってしまう。普段は被写体を見つけてからあたりを見回して良い背景を探すのだが、それでは絶対に撮れないのがこうした写真だ。時には発想の逆転も必要なようだ。また、雲は水面に映った姿も美しい。素晴らしい雲を見つけたら水たまりでも、パケツの水でもいいから水面を探してみる。花が咲いていなくたってスイレンの葉でもあれぱ最高だ、少しくらい遠くたってカルガモでも泳いでいたらやはり最高の写真になる。広角レンズにPLフィルターをつけて秋の季節感をじっくりとフィルムに焼付ける(写真2)。

梅の木と(日高市巾着田) 昨年はどういう訳か一週間ほど遅かったけれど、毎年、正確に秋分の日(9/23)の前後に花を咲かせるのが彼岸花だ。曼珠沙華を含め多くの別名・方言名がある程に昔から人々の生活にとけ込んでいた花だ。毒々しい花色のせいなのか、花が咲くときに葉が無いことが嫌われたのか、地下茎が有毒だからなのか、とにかく、死人花、地獄花、幽霊花の別名の通りこの花に離れ難くつきまとっているイメージがある。このため、カレンダ―にして飾ったり、ポストカードにして誰かに贈ったりはしにくいけれど、(相手が昭和2桁生まれ以降ならぱこだわらずに使ってしまっても構わないという説があります)美しいものはあくまでも美しい。
 東京都なら半蔵門から皇居東御苑にかけヤマホトトギス(宮沢湖)ての皇居周辺、埼玉県なら日高市巾着田がなんといっても有名。あまりにも有名で撮り尽くされた感もないではないが、同じ場所、同じ花でどれだけのバリエ−ションが撮れるか、秋の一日をこれにかけるのも有益かと思います(写真3)(写真4)。巾着田そのものとはひと味違って、ここの周辺には普通の田圃がいたるところに見られ、稲の収穫と彼岸花を対比させた写真の撮影も可能です。巾着田では、同じ時期に蕎麦の花秋桜稲穂オクラの花(ハイビスカスに似た美しい花です)の撮影も可能です。巾着田の近くの宮沢槻ではヤマホトトギスの花を撮影可能です。深まり行く秋十分に楽しんで下さい(写真5)。

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