花追い人の撮影日記
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花追い人の撮影日記(神無月)
思えぱ「さきたま支部報」に本稿が初めて掲載されたのが昨年の11月1日。「花追人の撮影日記(霜月から師走)」として紅葉の撮影を中心に執筆してから今回で10回になる。今回の(神無月)をもって一年分の撮影日記を連載した訳だ。つまり、これにて一応の完結編。長い間のご愛読まことに有り難うございました。
支部報発行のための事務局の時間と手数、そして、発送費等の半分くらいはこの駄文のために費やされたごとになる。支部活助の趣旨としては、もっと多くの会員の声を掲載ずるべきものだと考えるがいかがなものであろうか。勿論、ご要望があれば、少し趣を変えて執筆を続けることはやぶさがでは無い。
さて、10月。おおかたの秋の花は終了して、冬を目前として花追い人としてはぐっと淋しい季節を迎えた。9月から咲ぎ始めているコスモスが盛りを迎える。といっても、花期の長い花。盛りといってもぴんと来ない。個人的な好みで言わせてもらえぱ、この時期、何といってもホドトギスの仲間だ。スズメノガタビラ、カラスノエンドウ、ヒョドリジョウゴ、ザギソウなど鳥の名前を一部に付けた植物ば多いが、ずぱり鳥の名前そのものが付いている植物ば珍しい。ホトトギスの仲間は日本でば種類が多いが特徴がはっきりしていて、いづれも一目でホトトギスの仲間と判る。それでも、それぞれが個性的で見分けることば案外易しい。試みに植物図鑑の草分け的な「原色牧野日本植物図鑑」がら、花の付き方の部分だけを抜粋してみた。
★ホトトギス:斜上に開く。
★ヤマホトトギス:散房花序をえき生(股がら生えること)。
★ヤマジノホトトギス:1〜3花づつえき生。
★タマガワホトトギス:散房花序を頂生(枝の先端に)。
★キバナホトトギス:茎の上方の葉えき(葉の腋)に2〜3からなる短い散房花序をつける。
★チャボホトトギス:葉えきにうずくまって抱かれて出て上を向く。
★ジョウロウホトトギス:有柄の花は茎の上半分の葉のわきに出て下垂しうつむきに咲く。
・・・勿論花そのものにも、色、形、模様、それぞれに個性的だが、「花の付き方」だけをとってもこれだけの個性があり、それに対しで高名な植物学者の細やかな観察と豊かな表現がある。我々も撮影に当たって、これに負けずに細やかで豊かな観察と表現を心がけたい。
この時期、秋の七種(ななくさ)を初めとしだ秋の草花はとうに姿を消し、ザザンカなどの晩秋から冬の花に移行しつつある。本来は春にピークのあるパラが園芸改良によって四季咲きとなって10月にもう一度小さなピークを迎える。郊外のまだ少し早いススキの根元にはリンドウがひっそりと可愛らしい花を咲かせた。その他にはツワプキ、イヌサフラン、ミゾソバ、サラシナショウマ、トリカブト、ヤマラッキョウなど、いくらか楽しめるが、秋の花の季節は終盤。これと引き替えに姿を現すのは、冬め渡りの途中に日本でしぱらくの間翼を休める、シギ・チドリの仲間たち。冬に向かってどんどんその数を増やして行くカモの仲間。オナガガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ。そして、ユリカモメ、ウミネコを初めとしたカモメたち。カモは原則どして雌が巣を守る鳥であるから、通常雌は外敵に見つかりにくい地昧な羽色をしている。これに反して、雄は雌に目立つために派手で美しい羽色だ。ところが、派手で美しい羽色は外敵にも目立つわけだから、雄は繁殖の時期以外は出来るだけ安全な地昧な羽色に衣を替える。日本の越冬地ヘ到着したばかりの雄たちはこの様な地味な羽色でほとんど雌と区別の付かない姿になっている。これを専門用語でエクリプスという。この時期の野鳥の種類の見分け方は大変に難しい。1O月の末から11月にかけて、このエクリプスたちは繁殖のために一斉に美しい冬羽に衣替えをしてゆく。日本を越冬地とする冬鳥達は日本では繁殖しないとおっしゃる方があると思う。確かに、繁殖そのものは春に北の国へ渡ってからだが、ペアリングという結婚相手を決める重要な繁殖活動の一部を越冬地で行う。派手で美しい婚姻色の羽色に変わるのはこのためなのだ。冬鳥のカモメやカモ、ハクチョウは野鳥写真を始めようとする人には最も撮影しやすい被写体といえる。どうせ花も少ない時期、紅葉にもまだ少し早い。雪や氷の本格的な冬の被写体はまだまだということで、この時期野鳥写真を始めてみることをお奨めする。カモに最も近づけるのは上野公園不忍池。種類が多いのは東京港野鳥公園。シギ・チドリ類ならばラムサ−ル条約指定の八津干潟。その他、石神井公園、葛西臨海公園、水元公園、狭山丘陵(狭山湖)など、水があれぱどこだって大丈夫。撮影場所には事欠かない。
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