5.幻のトガクシショウマに狂乱
[2005年 6月22日(水)](その5)
 |
|
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
|
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
燧ヶ岳の山麓まで引き返してから裏燧林道をずっと単独でやってきた
三条の滝分岐で5〜6名のパーティと合流して見晴(下田代十字路)方面へ向かう
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
林道なのだから当然のことだが、直射の光は入ってこないので
あたりは比較的薄暗い
小さな川を渡ったところで、左側から目に飛び込んできた光景があった
薄暗い中のピンクの花である
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
あこがれのトガクシショウマとの初めての出会いであることは瞬間的に判った
少し先行して坂を登りきってしまっていたパーティを呼び戻す
5〜6人のパーティである彼らは、この光景をまったく目に留めることもなく通り越したのである
彼らは戻ってきて写真撮影をしていたが、まもなくコースを先に進んでいった
 |
|
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
|
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
今や尾瀬の植物を紹介している書物はたくさん刊行されている
その手の書物にはたいていトガクシショウマの写真が載っているが
たいてい、いや、いづれも数輪の花をようやく咲かせただけの写真が載っている
それもたいていは見頃を外したものであることが多い
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
初めての出会いなのに、こんなに豪華絢爛で最高と断言しても差し支えない状態であった
こんな幸運がいったいあるのだろうか
燧ヶ岳でコースを失って撤退を余儀なくされたのは
この出会いのためで有ったのかも知れない
 |
|
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
|
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
夢中で撮影に没頭する
途中でカメラの設定が違っていることに気が付いて
やはり興奮しているんだと一人苦笑いしながらも、
それでも、設定を直して撮影をやり直す冷静さが少しは残されていることに満足したり
 |
|
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
|
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
こんな幸運な場面に次の機会は無いかも知れないので
現場で出来るあらゆることをしなければならない
撮影する被写体をいろいろ変えながら、手持ちのあらゆるレンズを装着してみる
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
カメラ位置をいろいろと動かしてみて
バック(背景)を空に抜いたり、地面に落としたり
バックに光を入れてみたり、さまざまなボケを使ってみたり
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
それにしても、この10メートル四方も無いような小さな空間の中の至福の時は、
時間に換算するとどれだけのものなのか
ほとんど自分でも判らない
とんでもなく長い時間であったような気もするし、ほとんど一瞬だったのかも知れない
 |
トガクシショウマ(尾瀬 裏燧林道) |
ひととおりの撮影が終わって、しばらくへたり込むように休んでみる
もうやり残したことが無いかどうか冷静になって考えるためである
写真というのは、無我夢中でのめり込むことと、冷静沈着な判断の両方が必要だからである
まあ、これで悔いはないだろう、そう決めて再び遅れ気味のコースへ戻ってゆくことにした
 |
ミヤマカタバミ(尾瀬 裏燧林道) |
コースへ戻ってもまだ心地よい興奮が全身を支配している
道ばたの草がすべて花をつけているように見えるし
それがいちいちとてつもなく美しく見える
 |
ツバメオモト(尾瀬 裏燧林道) |
ミヤマカタバミ、ツバメオモト、チゴユリ、オオミゾホオズキ、・・・
それぞれが美しい高山植物であることはもちろんなのだが
尾瀬では格別珍しいものでもない
こういうものがとてつもなく美しく見えるのは
こちらの気分の高揚のようなものが残っていたに違いない
 |
チゴユリ(尾瀬 裏燧林道) |
全体にコースタイムが厳しい一日であった
しかし、それも温泉小屋に到着するまでのことだ
ここまでくればあとの行程は十分に読めるところに至っている
温泉小屋で缶ビールをもらって少しだけゆっくりとすることが出来た
 |
オオバミゾホオズキ(尾瀬 裏燧林道) |
温泉小屋を過ぎると、林道から湿原にとあたりの風景はまったく別のものになる
シーズンオフの静かな尾瀬の湿原を歩きながら
湿原以外の尾瀬の魅力をもう一度噛みしめる
 |
?(尾瀬 裏燧林道) |
そうまもなく17時
小屋泊まりといってもずいぶん遅い到着時刻になる
一年中で最も日没の遅い季節だからまだ暗くなる心配は無いが長い長い幸せでいっぱいであった一日を噛みしめながら
今夜の宿となる見晴の定宿「ひのえまた小屋」に到着した